空に月なんてもういない あとがき
空に月なんてもうないが完結しました。
忘れもしない、それは二〇二〇年の三月末、コロナでぜ~んぶ予定が吹っ飛びひたすらお家のこたつでゴロゴロしていた時のことでした。
その時はdeviantArtの垢とpixivの垢を作ったばかりの頃で、でも小説をネットで公開するつもりはそんなになく「まあ気が向いたら」というくらいのつもりでした。まだノートにボールペンでひたすら書き溜めていました。
『空に月なんてもういない』はまだ義務教育を受けていた頃にノートにペンで書いていたものでした。一回書いて挫折して、二回目チャレンジして今で言う一章くらいまでは書きあげたものの二章目で尻切れトンボ(全然関係ないんだけど尻切れトンボってかなりグロなのでは?)。
しかし三回目、書き上げに成功しました。完結しました。その三回目の原稿は、まだノートにボールペンでした。三章の文字だらけ表紙はこの三回目の完結した原稿からのものです。
それから何年か経ち、コロナで自堕落な生活を送っていた頃ふとリチェ達のことを思い出しました。
「今からこたつで寝て、何かそういう気分になったら空に月なんてもういないをPCに打ち込んで、ネットで公開しよう……すやすや」──という考えがふと頭に思い浮かび昼間からこたつで寝ました。そして起きたらそういう気分だったので書いた、というのがネットで空に月なんてもういないが公開されるようになった経緯。
実はその例の『三回目』はちゃんと完結させられたもののなんだか「これで???????ええんか???????」という疑問の残る終わり方だったんで書き直したい気持ちもちょーっぴりあったし、まあそれが良い具合にやる気につながったのかもしれない。そんなこんなで空に月なんてもういないは公開されたのでした。ネットで小説を公開するのなんて初めてだったから一章の一話を公開するときはすげー腹痛だった。
アナログ原稿時代からなんだけども、完結したあとのあとがきはキャラクター一人一人を野暮なまでに語るというマイ行事があるので、以下、行事を始めます。
リチェール・ラミア
本作主人公。
どっか(多分記事のほう)で4Ⅽという短編を書いている……という話をしたが、実はエピローグがそれの一部。四つの話から成る短編の予定で、別個独立させてふんわりフューチャー……という予定だったけども、そのうちの■■■さんの部分だけを独立させてこのエンドとなった。
彼女に対してはマジで作中でやり切った感が凄まじいのでここでわざわざ述べることはそんなにない。
愛してるぜリチェ。
ミア・ラリトス・ルア
そんなに目立つ人でもないので影になりすぎないように気をつけよ~~~とか思ってたのに、意外と彼女が『普通の人』なので却って色々書けて満足。
彼女は漓怜館を離れて以降、国に帰ろうと旅をしている。4Ⅽでその旅の様子を見れるようにしよう……と思っていたが一つだけがエピローグに回ってきたため現在4Ⅽをどうするか迷っている。図書館作った時に司書室にでもぶち込むか!
ちなみに護衛にティアを連れていますがタダで護衛してくれるほどティアが優しくないようで、出世払いということにして雇った。旅が長引くほど膨れていくティア雇用代……。
ティア・パレロ
ミアとは真逆のある種『普通の人ではない人』なので苦労した。
漓怜館を離れて以降はミアの護衛をしていた。最終的にその時の護衛の給料の全額回収は諦めた。
ミアの護衛をしている途中くらいから、殺しの仕事はリスクもあるし安い給料だけど、護衛業は給料が良いしそこまでリスクもないということに気付き、殺しの仕事をしなくなる。
旅の終えたミアから護衛をしていた時の給料を毎月送ってもらうことで、なんとなく二人の縁は続いていたものの、ある日その給料回収をあっさり諦め、ぷっつりミアと縁を切る。
レステーア・フレンテア
漓怜館を離れたあとは貴族の屋敷でしばらく働き、その数年後に王宮の下働きのメイド(掃除とか簡単な炊事の手伝い)として雇われる。
ある日ちょっとしたことから、ある侍女の代理をすることになり、そこで下働きのメイドとして働くよりも侍女のほうが向いているなということに気付く。元々彼女が名家(の分家)の出身だったこともあり、侍女として雇われるようになった。
大好き。
レイン・ラミア(偽物の妹のほう)
……はい。
彼女は月を破壊する前に死んでしまったので呪いは解けなかったわけですが、ではここで六月二十二日の呪いをかけられた人のその後について。
リチェたちが月を破壊したあと、六月二十二日生まれは人を殺したり等の暴走が完全になくなりました!みんなはっぴー!……とまではいかず、暴走は多少はマシになるもののその影響が完全に消えたまでとは言えない状況。月が壊されたあとに六月二十二日に生まれた人たちは何の影響もないまま生まれてきてそして何もなく成長していきますが、月破壊以前の六月二十二日に生まれた人たちはそうとはいかなかったようです。一度掛けられた呪いは完全に解けることはなかったらしい。
しかし社会的な流れで、六月二十二日生まれのその呪いの影響は精神的な病気のひとつとして分類されるようになり、少なくとも殺されることは無くなったようです。
六話冒頭に出てきたアナディア・ルーセルト(新聞投書の服役中の人)は殺人罪ではなく長期間にわたる六月二十二日生まれ蔵匿罪で服役しているのですが、この社会的な影響を受けて服役中に殺人罪も適用され、服役期間が延びたんじゃないかな。彼女にとってはその処罰は救いだったんだろうけど。
ユーテ・ユーラレット
元政治家。今はそんなに大々的に政治家業はしていないがそれでもそこそこの地位と名誉をもって日々努力をしているらしい。
なんかこういう、他人から見たら汚いことやってんだけどしたたかに努力してる人が世の中を上手くわたって行けるよね、という……メイン四人とはある意味で正反対の位置にいる人。
天宮夜夜
最後の最後で出すかな……と思って書いていたものの出なかった人。
というのも、彼女はもう『心が完結しきっている人』でありその象徴なので、わざわざ最後に出す必要もないというのが本音でもある。
アンカレッジ・レストリー(『マリーゴールド』)
一章の四話のみで出てきた人。
ハンドメイド・オーディエンスでのほうがよっぽど喋っているような気がする。
ティア一人のためにわざわざ山奥の漓怜館まで出向いて来たりしているもののslayの中では偉い人。
ルイシアといい、ティアといい、変な奴担当なのかもしれない。
ル・セドラン
先に述べた『三回目』には本作でのキャラクターは出揃っていたんだけども、唯一その『三回目』から追加された人。彼女の名前はランドセルのアナグラムという話はもうどこかでしたんで割愛。
伏線ばちばちに張ってたしこいつそのものが伏線みたいな感じ。
顔が描きやすい。
空降怜(レイラ・ジェニウス/ラシュタ・ストップ)
シリアスなシーンで方言丸出しは不覚に面白くなっちゃうか……と思い、シリアスなシーンは発音を変えれば方言になるけど標準語の発音のままでも読めるようにした。方言って、その方言を使わない人からすればどこまで通じるのか不安すぎる。
例の『三回目』のエンドは空降怜の自殺を肯定する話だったんだけども、今の私は自殺を完全に肯定することまでは出来ないらしい。なんだか自分の内面が一番見えるよなあ、何て思った。彼女の名字はgeniusをヘンテコ読みしたものです。
あと本当の名前は、結局彼女は逃れられなかったことを暗示するために『レイ』という略称を使いたかったのでレイラという名付けをしたんだけど、レイラの名前の意味を調べてなんだか運命を感じました。
これが運命……。
死霊美優
こういう女、大好き!
心の傾いた人間に囁いて慰めて堕としていく奴が好きすぎる。
美優は感情の器官のない機械なので由以に対して全く何も思っていない。当初の予定ではあんな消え方ではなかった。
結崎由以
この子もこの子で『心が完結しきっている』うちの一人。最期は美優に殺されてしまったけれど由以はきっとそれを心の持たない美優からの唯一の贈り物だと思っているので幸せに死ねたのだと思う。
彼女みたいに、他人から見れば最高に不幸でも本人の感覚が歪んで歪んでそれを幸せと感じとれるならそれは他人からどう見ようと本物で最高の幸せだよなあ……みたいなことを思うのでその象徴でもある。結崎大好き!
あとはひたすら本作に思うことです。
当初の予定では本作のエンドはみんな一緒に暮らして孤独じゃなくなったね、というものでした。しかし書き進めていくうちに、誰かと共に過ごせることがイコールで孤独ではないことにつながるかと言ったらそんなこともないよなと思うようになり、あのような形でのエンドとなりました。
この最後を書くにあたって春頃、そこそこ大雨の日にほとんど街灯のない夜の道で目を瞑って歩いてみたけど……すごい怖いな、あれ……。たまに怖いもの見たさみたいな感じで今でもするけど、何度やっても怖いな……。
今はこのエンドですっげー満足です。ちゃんと書けて良かった。
それと本作を書いている間にハンドメイド・オーディエンスが始まりそしてあっという間に終わったけども、ハンドメイド・オーディエンスを書き終わった時から今まで、約束に対する思想についてはそこまで変化はないのだな……ということにも気づけた。そうか、約束は叶えるものなのか……?
それとこれは最後に野暮な注釈的なものだけど、本作は鬱々ファンタジーであってあくまでも『鬱々』程度なので『鬱』そのものは今やってる別のシリーズことSSSのほうで……はい(明確な言及を避けたい)。
何はともあれ、この二年八か月ありがとうございました。途中半年ほど新話公開停止期間があったものの、それ以外は大規模な停止期間なく進められて良かったです。
アナログ原稿のときに読んでくれたおともだちと、それからネットで公開しました本作を読んでくださった方、感想や絵をくださった方、凄まじく感謝です。今でも時折見返しては創作のエネルギー源としております。
それでは、ここまで空に月なんてもういないにお付き合いいただきありがとうございました!
それから最後にリチェに、ありがとう。
入宮Eツリ
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